慢性痛を乗り越えるための3つのコツ

腰痛

今回は、痛みが長引いてしまっているときの「乗り越え方」を3つに絞って整理します。

1. 痛みが減る条件を特定する

「痛みが減る条件を特定する」ことが、痛みアプローチの初期段階においてはすごく大事です。

それはストレッチでもいいですし、ゆっくり湯船に浸かるでもいいです。仰向けで脚を伸ばして寝ていると痛いけれど、横向きで丸めていると痛くない、などでも構いません。

とにかく「こうすれば平気だな」と思える条件を特定すること。これが運動学的な意味でも心理的な意味でも大事です。

結局「どうすればいいか分からない」状態が不安につながり、緊張につながり、もっと痛みが起こりやすくなり、痛みの箇所が増えるという悪循環の根源です。はじめに安心材料を見つけることで、その流れは弱められます。

たとえば「仰向けで伸ばして寝ていると痛いけど、丸めると痛くない」という場合は、腰の反りが強くなりすぎるときに痛みが起こるのかな、みたいな運動学的な分析のスタートになります。

2. 動ける範囲で動く

「動ける範囲で動く」ことも、運動学的な意味でも心理的な意味でも大切です。

要は「普通に生活する」ということです。もちろん、めちゃくちゃ痛い時は休憩して構いません。そのうえで、動ける範囲で普通に生活を続けることを大事にしましょう。

敢えて動かないようにして不動が続いてしまうと、筋肉や関節が硬くなったり、筋力低下が起きたり、物理的にもっと動けなくなることがあります。さらに認知的にも「痛みを抱える自分」を強化することにつながる可能性があります。

この「痛みの自己同一化」に良し悪しはありませんが、痛み改善を目指す上では「不利」です。なぜなら脳が「痛みありき」で世界を認識・予測・行動してしまい、 “誤作動”を誘発するばかりでなく、自らの治癒力をも封じ込めてしまうからです。

「腰痛は“攻略”できる。痛みをパズルとして捉える思考法について」より

3. 睡眠時間の確保・固定

「睡眠時間の確保・固定」も重要です。

できれば7時間、8時間といった十分な睡眠をとりましょう。人体の修復・回復が進むのは、活動中ではなく就寝中です。

「固定」というのは生活リズムを整える、体内時計を整える、という意味です。サーカディアンリズム(概日リズム)を意識し朝日を浴びて、夜に眠くなれるようにする。この“流れ”を作ることで、ちゃんと眠れるようにしていけると理想的です。結果として、痛みを減らす方向に関わってきます。

慢性痛と「中枢感作」について

慢性痛の「むずかしさ」―それは原因がわかりにくいことにある、と言えるでしょう。

急性痛のように明確な組織損傷(骨が折れていたり、筋肉に傷がついたり)が無いにも関わらず痛みが生じてしまうのが慢性痛の一つの特徴ですが、この「原因の掴めなさ」に、多くの人が困らされています。

そんな慢性痛のメカニズムを紐解く上で関わる神経生理学的現象として、脳や神経の過敏化=“中枢感作”があります。

中枢感作とは「痛みが長期化した時に生じる脳や神経の過敏化」であり、ちょっとの刺激でも痛みを感じやすくなってしまう状態を指します。

火災報知器で例えるなら…
煙がモクモク立ち込めて鳴るのが正常だとすると、ティファールでお湯を沸かしたときの湯気だけで鳴ってしまう
みたいなイメージです。

中枢感作も慢性痛を乗り越える際の大きなハードルになりますが、こういった“痛みの過敏性”を乗り越えるときに、3つのコツが関わってきます。

・痛みが減る条件を特定することで安心材料が増やす▶︎不安と緊張のループを弱める
・動ける範囲で動くことで、不動による悪循環を断ち切る▶︎できることを広げる
・睡眠を確保・固定する▶︎回復の土台を整える

+αのマインドチェンジ:大ごとに捉えすぎても不安を強め慢性化を促進する

慢性痛を抱える方と話していると、自分の痛みの原因について「骨が折れたんじゃないかと思っていました」と仰る方が少なくありません。それも画像を撮ればはっきりするでしょうが、実際にはアプローチによってあっさりその場で引いてしまう痛みであったりと、「※器質的異常に起因する痛み」ではないことが殆どです。

※当院においてはまずはじめに、その可能性を疑い、運動学的検査などで除外した上で介入するので当然ですが。

なにが言いたいかというと、慢性痛を抱える方は往々にして多かれ少なかれ痛みに対する認識の仕方が現実と乖離してしまうのです。得体の知れない痛みがずっと続く不安はやはりメンタルにきますし、段々と客観的ではなくなっていきます。「骨折している」とか、「なにか大病に起因している」とか、細かく評価していけば否定できる観念に縛られて、それがクリティカルな対処に目を向ける妨げになってしまう場合が少なくないです。

だからこそ「こうすれば平気だな」という対処法やマシになる条件を把握することが重要です。それらが分かっていれば、淡々と冷静に対処しやすくなり、痛みを必要以上に大きく捉えずに済みます。

加えて「ゼロヒャク思考を捨て、寛解という概念をインストールする」ことも重要です。

「痛いか痛くないか」「不調か不調じゃないか」といった粗い捉え方で一喜一憂することに利はありません。そうではなく、「この方法を行うと2〜3割痛みが減るな」「昨日より少し痛むけど動けないほどではないな」とグラデーションで捉えつつ、上手く付き合える状態(寛解)を目指していく―このスタンスが結果的に痛みの克服を早めてくれます。

さらに言えば「諦めの境地」に達することで、力が抜けるようになり、痛みや不調の絶対数が減るケースもあります。

完璧主義やゼロヒャク思考や悲観的なマインドは痛みや不調改善の阻害因子です。負のループを断ち切るためにも上記のマインドセットをしつつ、今回紹介した3つのコツを意識しましょう。

まとめ:学習として捉え、向き合う

痛みを乗り越えるプロセスは、総じて「学習」です。

運動学習としての身体の使い方の再学習、認知行動療法的に自分の痛みの捉え方を再学習する、という視点で取り組みます。

まずは今日、痛みが減る条件を見つける(スマホのメモに書き出す)、動ける範囲で動く(なにか予定を建てる)、寝る・起きる時刻を決める。この3つから始めましょう。

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