腰痛治療における「手術」
これは中々に闇深いものであります。
あなたがどれくらい「医師」を信じているかはわかりません。が、たとえ医師の勧めでも「それだけ」で手術に踏み切るのは危険と言わざるを得ません。
医師に勧められた手術の結果、症状が再発することは「ある」からです。
当院へお越しの方の中にも手術後に腰痛が再発した方や手術を勧められていた方は多数おられます。
そういった方々の症状は(結果論ではありますが)手技・運動・生活指導で元の生活が送れるレベルまで改善しました。
となると少なくとも「勧められていた手術」は不要だったと言えるのではないでしょうか。過去の手術がほんとうに必要だったか?も疑問は残ります。
その手術は本当に必要か?受け手はフラットに、冷静に、見極める必要があります。
けれどいったいどうやって、手術が必要かを見極めればいいの?医師でもないのに‥という気持ちもまあわかります。
が、そのような“医師信仰”を多くのひとが内面化していることも、本来は不要な手術を成立させてしまう(後述する“闇”を深める)一因と私は考えます。
繰り返しますが、医師に勧められた手術の結果、症状が再発することはあります。「手術後も残る症状」や「手術を勧められていた症状」が、手術せずに改善することもあります。
肩書き=能力、ではありません。先入観はいったん横へ置き、お付き合い頂ければと思います。
じつは、手術が必要なケースには兆候があり、しかもそれはある程度“手術前にわかる”のです。
今回はそんな手術すべきかどうかの「見極めチェックポイント」を紹介していきます。
手術すべき?見極めチェックポイント
手術前にわかる「手術が必要なケースにみられる兆候」は以下の通りです。
左列(特に赤い項目)に該当する場合、病院受診を勧めます。器質的な病変や神経損傷が見つかるかもしれず「手術が必要な症状」の可能性があるからです。
反対に左列に非該当の場合は「手術不要な症状」もっといえば、手術しても改善が見込めない症状の可能性があります。どういうことか?一つずつ見ていきましょう。
Q1.お風呂の後は‥?
筋肉はお風呂に入る(温める)とゆるみます。よって「筋肉の緊張に起因する痛みやしびれ」は程度が軽くなることがあります。
他方で人体の構成要素には温めても変化しないものもあります。
例えば「ヘルニア」です。
お風呂に入ると飛び出たヘルニアが引っ込む、みたいなことは考えにくいです。お風呂に入ってカラダを温めても、分離(疲労骨折)した腰椎がくっついたり、肥厚した黄色靭帯が薄くなったり、曲がった背骨が戻ったり、骨棘が消えたりもしません。
つまり、カラダの「器質的変化・構造的変化」に起因する痛みやしびれは、温めても軽快しない、ということです。また腰椎分離すべり症の場合は温めることで(筋肉がゆるむことで)症状が強くなる場合があります。
Q2.姿勢を変えると‥?
姿勢によって出方が変化(マシになったり強くなったり)する症状には、筋肉や末梢神経(四肢の神経)が誘発因子として絡んでいる可能性があります。
一方、中枢神経=脳や脊髄の損傷に起因する症状は、損傷の程度にもよりますが、基本的に「波」がありません。
姿勢による変動がみられにくく、訴えとしては「24時間ずっと(しびれている)」というようなことが聞かれます。
Q3~6.神経症状は‥?
神経損傷の程度により、みられる兆候も、手術適応かどうかも大きく変わります。以下を認める場合は、「手術適応」とされる場合が多いです。
特に排尿障害(尿が出せない/勝手に出る)を認める場合は、手技や運動療法ではどうにもなりません。今すぐ病院受診されることを勧めます。
Q7.ストレッチは‥?
ストレッチにより少しでも楽になるということは、「お風呂理論」と同様、その痛みやしびれには少なからず「筋肉の緊張」が絡んでいます。
Q8.つま先立ちは‥?
腰の神経は下半身の筋肉を支配します。そしてヘルニアも狭窄症もすべり症も好発部位は「腰」です。これらにより神経が損傷された場合(これも程度によりますが)つま先立ちが困難になります。その場合はこちらも今すぐ病院受診を勧めます。
あなたの原因は‥
繰り返しますが左列(特に赤い項目)に該当する場合、早急な病院受診を勧めます。器質的な病変や神経損傷が見つかるかもしれないからです。神経損傷は「時間勝負」でもあります。
そうでないなら、その痛みやしびれの原因はたとえ診断名がついていても、器質的病変由来の症状ではない(ヘルニアや狭窄症のせいではない)可能性が高いです。
その場合は運動療法が適応と言え「手術不要」言い換えると手術をしても治らないかもしれません。
原因がなんなのか?手術すべきかそうでないのか?は画像診断(CTやMRI)だけではわからないのです。
本来は上記のような兆候も含めて総合的に判断します。
不要な手術が行われる“闇深き”背景
注意が必要なのは運動療法といっても、なんでもかんでもやれば良い訳ではない点です。
運動療法適応例の「原因」には多かれ少なかれ筋肉の緊張が含まれますが、その「元」を辿ったとき、普段の何気ないカラダの使い方(姿勢や動作や呼吸の癖)は無視できません。
一言で「筋肉の緊張」といっても生じるメカニズムは様々あり
ある人は頭の位置の影響かもしれないし、またある人は歩き方のクセかもしれないし、寝る時の環境かもしれないし、仕事で繰り返す姿勢や動きかもしれないし、内科的な因子かもしれないし、精神的なストレスかもしれないし、過酷な労働環境それ自体かもしれません。
要は(当たり前ですが)原因も改善に向けたアプローチも一人ひとり異なる、ということです。
何でもかんでもやればいい、腰が痛いなら腰を揉めばいい、わけではありません。
さらに踏み込んでいえば
「リハビリでも改善しないし、手術が必要なのかな‥」と考える前に「的外れな治療」を受けている可能性を考慮し、セカンド/サードオピニオンを受けることも大切です。
治療は「慎重に選ぶ」必要があります。
これはあくまで私の観測の範囲内(接してきた方々の経験)の話ですが、
上記の流れで「不要な手術」は行われます。一言でいえば術者の“スキル”の問題(と思いたい)です。とは言え明確な手術適応例でない限り、いきなり手術という選択は迫られません。3ヶ月〜半年程度のリハビリ等なんらかの治療の提案があるはずで、そこでしっかり「選ぶ」ことで悲劇は避けられます。
避けるべきは、ロクに話も聴かずに原因不明のまま行う治療です(痛い所へのマッサージや電気治療/いきなりの歩行訓練/湿布を貼って・薬をのんで・注射を打って様子をみましょう、など)。これらは実質的には「なにもしていない」に等しいからです。
いや、もしかしたら医師はあえて分かっていながら、その場しのぎしながら「なにもせずに」その時を待っているのかもしれません。
いっぱしの医療に携わるものとして、あまり考えたくはないですが、不要な手術問題の背景にあるのは、ただの提供者側の「不勉強」「スキル不足」だけではないようにも思います。
手術適応とは到底思えない症状になぜ手術をするのか?術後も治らない痛みに悩まされる方がなぜ後を絶たたないのか?
はじめは純粋に疑問に思っていましたが、手術は実績/カネのためにする―そんな世界があると知り、合点がいきました。
手術を受ける側からすればたまったものではないと思いますが、あなたの目の前にいる治療者は「患者が良くなるかどうかなど、ハナからどうでもいい」と考えている可能性があります。
‥とはいえ流石にそれが業界におけるスタンダードだとは思ってはいません。見聞きする限りはまっとうなお医者さんが多数だと思います。が、一部そういうこともあると頭の片隅に置いておいて損はないとも思います。
そもそも医師は医学のプロですが、姿勢や動作分析のプロではありません。そこは管轄外です。その意味で痛みに対するアプローチの「結果」はセラピストの技術に依存する部分が大きいと思います。
ただいずれにせよ被術者にとって最も重要であろう「結果」が出ない治療はあるので、繰り返し強調しますが、治療は慎重に選ぶことが大切です。当記事で引用していることも様々な事例もスマホひとつあれば調べられます。
それと仮に本当に「手術適応例」だった場合、手術をしたからといって痛みやしびれが解決するとも限らないことを理解しておくのも大切です。なぜなら手術対象となる脊椎などの器質的変化はあくまでも原因の一部に過ぎない可能性があるからです。
たとえば再発の一因として、術前➡︎術後で「背骨を変形に至らしめるほどのカラダの使い方」が変わっていないことが考えられます。であれば少なくともその“穴”はあきっぱなしです。これも考え得る一つの再発ルートです。
結局どこに行くべき?保険VS自費
基準は簡単です。あなたが「改善」を感じていれば(結果さえ出ていれば)どちらでもよいのです。
補足すると「良くなる治療」はたとえ1回目でも明確な変化をあなたが感じられる(1回で治るということではありません)のに加え、回を重ねるほど、あなたが「生活上の変化」を感じられます。
それをせいぜい数ヶ月〜半年程度、長くても1年程度続ければ、カラダも生活も変わります。
逆にいうと1回目で明確な変化が出ないあるいは何年も通ってる治療は、この先も変わらないと考えてよいでしょう。
痛みは個人的で主観的なものだからこそ「あなたがどう感じるか」が重要な基準です。
また他責で受け身なスタンスでいる限りは、その場しのぎが限界です。改善は望めません。カラダも脳も「能動的に」動かさないと恒常的な変化は出せないものです。
億劫がって自分の肉体の責任を放棄したら、やがて整形外科医のドル箱になり、それから寝たきり患者として病院のドル箱になるかもしれません。
腰痛に限らずですが、カラダに起こる多くの問題を解決するには、淡々と着々と主体的に向き合う姿勢が重要です。自分以外にそれはできないのです。
誤解を恐れずハッキリ言えば「不要な手術」は術者と被術者の共犯関係によって成り立つ側面もあるでしょう。
「年齢」「筋力」「診断名」もじつは瑣末なことかもしれません。結果を左右するのは案外「向き合う覚悟の有無」「やる人かどうか」だったりします。
保険診療を安かろう悪かろうとまでは言いませんが(“闇への入り口”ではあるかもしれませんが)
事実として時間や期間やできることに制約がある事は考慮が必要です。クリニックや整形外科に行く機会のある方は、よく周りをみて頂きたいのですが、だいたい、あなたもAさんもBさんもCさんも「同じこと」をしていないでしょうか。
結果は「選ぶ段階」でほぼ決まります。
どこに行けばいいの?と迷う時はまずこの表で見分け
その上でよくリサーチし、一度受けてあなたが明確な変化を感じられるかを基準に選べば、おのずと「不要な手術」は避けられるでしょう。
あなたが良い選択を出来ることを陰ながら祈っています。