日本人のヘルスリテラシーの低さと「治る」の定義について

腰痛

腰痛はどのような状態になれば「治った」と言えるのでしょうか?

多くの方が「痛みがなくなる=治る」と考えがちですが、この認識は非常に危ういものです。実際に、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社が2023年に実施した国際調査では、日本の生活者は他国に比べてヘルスリテラシーが低く、痛みを我慢したり、医療・健康情報の活用が不十分だったりする傾向が明らかになりました。(※1)

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これを端的にまとめると、日本人は自分の身体の問題に対して、正面から向き合わず、適切な行動を先延ばししがちだということです。痛みを治療者任せにしたり、薬や病院を安易に選択することで根本的な原因にアクセスせず、「痛みが消えればよい」という短期的な視点に陥りやすい傾向にあるといえます。

このような状況を鑑みるに「通院し続けても腰痛が治らない」というケースや、日本が「寝たきり大国」と呼ばれる背景には、当事者意識の欠如や「治る」ことへの浅い理解が絡んでいると考えるのが妥当でしょう。

では、「治る」とは何を意味するのでしょうか?

「痛みがなくなる」ことをゴールとするなら、極論、痛み止めさえあれば十分です。しかし、それで問題が解決するでしょうか。実際、多くの腰痛患者は、痛みが一時的に引いても暫くすると再発する「ぶり返し」を経験します。つまり、痛みが消えたこと自体は「治る」ことと同義ではないのです。

虫歯に例えてみましょう。麻酔によって痛みを感じなくしている状態は、決して虫歯そのものが治ったわけではありません。原因である虫歯を除去し、汚れが溜まりにくい状態を作り、適切な歯磨きの仕方を身につけ、それを実行し続ける事で、再発を防ぐ――これらを達成してはじめて「治った」と言えます。腰痛や坐骨神経痛も同じです。

要するに、「痛みがなくなる=治る」ではなく、「自分で再発予防し続けられる状態=治る」ということです。

痛みを何度も繰り返す人は、まず「治る」の定義を見直す必要があります。そしてその上で「主体的に」「自分が」その問題と向き合う必要があります。術者はあくまで伴走者です。走るのはあなたです。

「馬を水辺に連れて行けても水を飲ませることはできない」

これはあまりにも有名なイギリスの諺ですが、「治してもらう」という発想が根付く限り、人は自らの身体に起きている変化やその原因と正しく向き合うことができません。防げる障害も防げません。

治すために必要なのは、「痛みを消す」ことではなく、以下のプロセスです。

  1. 痛みの仕組みを知る
  2. 痛みを生む行動を特定し、それをなくす
  3. 万が一、痛みが再発しても自分で対処できる状態をつくる

この認識を持つことで、取るべきアクションは大きく変わります。

自分の健康を守れるのは自分自身しかいません。短期的な痛みの軽減にとどまらず、根本的な改善に目を向けることで、真の意味で「治った」と言える状態へと一歩ずつ近づいていきましょう。

※1 ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社「人生100年時代 × デジタル社会の総合的なヘルスリテラシー 国際調査」(2023年)
https://www.jnj.co.jp/media-center/press-releases/20231208

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