腰痛改善に役立つのは「腹式呼吸」か「胸式呼吸」か?

この疑問に解剖学や生理学や運動学的観点から答えていきます。
人体の原理原則から考える「呼吸に使う筋肉」について
まず、普段の呼吸の大部分(おおむね7〜8割程度)は「横隔膜」によって行われるーこれが人体の原理原則とされています。

呼吸筋の運動学・生理学とその臨床応用 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/21/8/21_KJ00001306887/_pdf より引用

つまり日常的に行われる(べき)呼吸の大部分は「腹式呼吸」となります。

呼吸にかかわる筋肉↑ 呼吸筋の運動学・生理学とその臨床応用 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/21/8/21_KJ00001306887/_pdf より引用
また腹式呼吸を体得することは「腰痛の起こりにくいカラダ」をつくる上でも欠かせません。なぜなら
・腰痛を抱える方は総じて「脱力が苦手」である
・副交感神経を優位にしカラダの脱力を促す作用が腹式呼吸にある
からです。腰痛や肩コリや坐骨神経痛などカラダの痛みを抱えるひとは、腹式呼吸を日常的に行えていない可能性があるとも言えます。
試しに腹式呼吸が行えているか確認してみましょう。

腹式呼吸は吸うときに体幹が360度満遍なく膨らむ(ドーム状の横隔膜が収縮・下降し腹圧が上昇するため)。腹式呼吸自体が腰背部筋群のストレッチにもなる。対して胸式呼吸は腹部や肋骨や肩が大きく動き、腰背部の動きは乏しい。例えば「腹筋群の機能不全によって腹圧を高められないとき」に横隔膜も力を発揮しにくくなる(収縮しっぱなし≒弛緩しにくくなる)が、姿勢や情動など何らかの因子の影響で「横隔膜で吸えない」時、代わりに胸式呼吸を行うようになる。
座るか立つかして、腰に手を当て、息を吐き、吸うときに腰が膨らむのであればそれは腹式呼吸です。
息を吸う時に
・肩がやたら上がる
・胸郭(胸やお腹)ばかりが膨らむ
カラダの状態として
・常に肋骨が浮き出ている
・下腹部がぽっこりしている
といった特徴がある方は呼吸の癖としては「胸式呼吸」のほうがしやすくなっているかもしれません。
腹式呼吸と胸式呼吸は役割も特徴も異なります。どちらも必要な呼吸です。
ですが「普段使いすべき呼吸」「腰痛のもとになるカラダの緊張を抜く呼吸」がどちらかといえば、それは腹式呼吸です。
胸式呼吸は「交感神経を刺激する呼吸」であり、仕事や運動に集中する時などは有利な呼吸法です。しかし常日頃、胸式呼吸ばかりを繰り返すと、肩や腰をはじめとする全身の筋肉がガチガチに緊張し「脱力できない」「寝ていてもリラックスできない」状態になり、腰痛や肩コリだけでなく、不眠や頭痛や慢性的な倦怠感など「自律神経症状」に繋がってしまうかもしれません。
したがって腰痛改善に役立つのは「腹式呼吸」か「胸式呼吸」か?―という問いの答えも(どちらかといえば/優先的に獲得すべきは)腹式呼吸となります。
・カラダの脱力やリラックスを促すのは、副交感神経を刺激する「腹式呼吸」
・呼吸はどんなときでも絶えず行われる運動
・痛みを抱える方は往々にして「カラダの脱力」難しくなっている
等の理由から腰痛改善を目的としたアプローチにおいても「呼吸の問題」は優先して着目すべきであり何より先に改善したいです。
「ピラティスだから胸式呼吸/ヨガだから腹式呼吸」ではありません。呼吸法はあくまで“手段”
やることは「いまの状況を勘案したうえで、それを行う意図や目的を明確にして決める」ことが良い結果・狙った結果を出すために大切です。当然ながら。
・腰痛や肩こりに悩まされている
・脱力ができない
・寝てもスッキリしない
方は胸式呼吸が癖になっていて「脱力のコントロール」が難しくなっており、常にカラダガチガチなのかもしれません。
であればまずは横隔膜を用いた呼吸=腹式呼吸を自然と行えるカラダにしたいです。
実践!横隔膜を確実に作用させ、腹式呼吸の感覚を掴む簡単な方法
横隔膜が適切に作用しないと、腹式呼吸は行えません。しかし「上腕二頭筋(力こぶ)」や「太ももの筋肉」などと違い、横隔膜は「狙って力を入れたり抜いたりする事ができない」筋肉です。

横隔膜には“力を感知するセンサー”(=筋紡錘)がほぼない。よって随意的なコントロールは難しい。呼吸筋の運動学 ・生理学とその臨床応用https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/21/8/21_KJ00001306887/_pdf より引用
ポイントは、横隔膜が“作用せざるを得ない”体勢になることです。

「胸式呼吸しづらい姿勢」で呼吸することで、強制的に「腹式呼吸」が促され、徐々に腰が膨らむようになります。腰に手で触れておけばそれが確認もできます。
実質的に「腰が膨らむ感覚(≈持続的に側腹部および下腹部に力を入れて呼吸する感覚)」=「横隔膜を作用させる(しやすくする)」感覚です。
それがこのポーズでつかめたら、座って、立ってと姿勢を変えていき、慣らしていきましょう。
呼吸に関する投稿↓


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