呼吸―それは生命をつなぐ最も基本的かつ最も重要な営みです。
食事をしなくても、趣味を楽しむ時間がなくても、少しの間なら生きていけます。でも、呼吸が止まればどうでしょう?たった10分で生命は危機に陥ります。
私たちは呼吸によって身体に必要な酸素を取り入れ余分な二酸化炭素を排出することで、体内の酸塩基平衡(pH)を維持し、生命を維持しています。これがなければエネルギーを作り出すこともできません。
また「発声」や「感情のコントロール」などの役割も呼吸にはあり、呼吸筋の作用によって「声の大きさ」や「感情」のコントロールをすることが可能です(呼吸が変われば感情も変わる。逆も然り)
しかし、多くの現代人は「呼吸を意識的にコントロールする」という概念を持たず、浅く吸い過ぎる「胸式呼吸」が習慣化しています。これには座りすぎる生活様式や日常的なストレスも影響していると考えられていますが。
常態化した胸式呼吸は、肩こりや腰痛、坐骨神経痛、手のしびれ、不眠や頭痛など「自律神経の乱れ」に関連する症状を引き起こす傾向にあります。裏を返せば、腹式呼吸を習得したり「呼吸の数」を変えることは、こうした「日々感じる何気ない不調」を改善する可能性があります。
呼吸筋を意識的に使い分けることが、健康を取り戻す鍵となるのです。そこで今回は「深い呼吸」をするための基本的な考え方についてお伝えします。
深い呼吸のコツ
深い呼吸を意識すると、多くの人は「たくさん吸おう」とします。
ですが、重要なのは「吐くこと」です。
吸うより先に、まずはしっかりと吐ききることを意識しましょう。吸い過ぎるから苦しくなるし、吐けるから吸えるのです。「呼吸」という言葉の通り、「吐いてから吸う」順番を心がけてください。
また、吐くときは、「細く、長く、優しく」がポイントです。吐く時間を吸う時間の2倍にすると、リラックス効果が高まります(6秒かけて吐き、3秒かけて吸う。苦しくなければ8秒吐いて、4秒吸う)。これを無理のない範囲で行いましょう。
またしゃがめる方はしゃがみこんで吐く練習をするのもお勧めです。
吸うと緊張、吐くとリラックス
実際に試してみると「息を吸うと身体が緊張し、吐くと脱力する」ことがわかると思います。これは、呼吸が自律神経に与える影響によるものです。身体の仕組みとして、吸うと交感神経が優位になり、吐くと副交感神経が優位になります。深く吐くことでリラックスしやすくなるのです。
自律神経といえば、男女ともに30代以降になると副交感神経の働きが低下しやすく、肩こりや腰痛や不眠といった症状が出やすくなる、とも言われます。寝付けない方も肩が凝る方も脱力できないことに悩まれている方も「吐くこと」を大事にしていきましょう。
最後に
呼吸は、いつでもどこでもできるシンプルな健康法です。ぜひ一度「深く、ゆっくり、細く吐く」ことを試してみてください。それが合うなと思ったら、癖にしてみて下さい。呼吸を整えることが心と体の健康への第一歩です。
