生命を維持する上で最も大切なこと
「呼吸」
食事もドラマ鑑賞もゴルフも少しくらいやらなくても死にませんが、呼吸は10分やらなければ死にます。
ヒトは呼吸によって生命維持に欠かせないエネルギー代謝に必要な酸素を体内に取り入れ、産生される二酸化炭素量を調節し、pH値を一定に保っています(代謝性呼吸/不随意/中枢は脳幹にある延髄と橋)。また呼吸は「発声」や「情動」にも関わります(行動性呼吸/随意/中枢は大脳皮質運動野と大脳辺縁系)
生命維持以外にも「発声」や「感情のコントロール」などの役割を持つ呼吸。
呼吸(呼吸運動)は呼吸筋の収縮によって行われるため、本来は自分でコントロールすることが可能です。
呼吸筋の作用によって「リズム」「声の大きさ」「感情※」などのコントロールが可能です※呼吸が変われば感情も変わります(逆も然り)
しかしながら多くの現代人は呼吸がアンコントロールになっています。というか「呼吸をコントロールする」という概念自体を有しておらず、大抵、胸式呼吸が癖になっています。
街を歩く人の足の運びや座っている人の呼吸の仕方を暇なときに観察するのですが、8割くらいの人は浅く吸い過ぎな(肩で吸う)胸式呼吸を癖として行っています。座りすぎる生活様式や社会の中で日々受けるストレスの影響でしょうか。意図的に腹式呼吸と胸式呼吸を使い分けられない場合も少なくないと思われます(役割も使う筋肉も別)
肩こり/腰痛/坐骨神経痛/手のシビレ、あるいは不眠/頭痛をはじめとする自律神経の失調症状など「痛みや不調を抱えている方」も傾向としては胸式呼吸(肩で吸う浅い呼吸)をしています。
逆にいえば、上記のような不調に対する改善策として呼吸アプローチが有効な場合も多々あるという事です。
用いる筋肉を変える、腹式呼吸を体得するなど「呼吸アプローチ」が腰痛や自律神経の失調を改善させ得る可能性があります。
繰り返しますが呼吸はコントロール可能です。影響は良くも悪くも24時間365日受け続けます。呼吸の癖が変わらなければいくらマッサージを受けても肩こりが変わらないかもしれません。
そこで今回は「深い呼吸」をするための基本的な考え方についてお伝えします。
意識すべきは「吸う」より「吐く」
深い呼吸を意識する時、吸う事に一生懸命になる方がいます。
ですがむしろ意識すべきは「吐く事」です。
順番も先に吐きましょう。吸呼(吸って吐く)ではなく文字通り「呼吸(吐いて吸う)」です。
吐けば勝手に吸うし、吐けるからこそ深く吸えます。
肩こりや息苦しさなどを抱える方はまず「細く長く優しく吐く」事を意識してみましょう。
リラックスしやすい呼吸のバランス
リラックスしやすい「吐く量と吸う量のバランス」は2:1です。
6秒吐いてから3秒吸うとか、8秒吐いてから4秒吸うとか、そういう事です。
ただし無理はしないようにしましょう。
呼吸に限らず体を整えることを目的としたケアやエクササイズ全般に言えることですが、ラクに脱力して“頑張らずに”行う事が大切です。
回数や秒数を言うと「こなす事」が目的になって頑張ってしまう人もいるので人によって伝え方は工夫しますが、深い呼吸/リラックスしやすい呼吸/痛みや不調を防ぐための呼吸の目安は上記のような形です。苦しくならない程度に意識してみましょう。
吸うと緊張し、吐くと脱力する
実際にやってみるとわかると思いますが、身体は息を吸うときに緊張し、吐くときに脱力するようにできています。これは自律神経と呼吸の関係による反応です。
息を吸う時➡交感神経が優位になり、カラダは緊張しやすくなる
息を吐く時➡副交感神経が優位になり、カラダは脱力しやすくなる
また自律神経系の一つの特徴として「加齢に伴う変化」があります。
男女共に30代を過ぎるとリラックスさせる役割を持つ副交感神経の働きは急低下し、戦闘モードの(緊張を産む)交換神経が優位になると言われています
誰しも加齢に伴い「脱力しにくく、緊張しやすく」なるのです。そして血流が滞りやすくもなり、肩こりや腰痛や不眠が起こりやすくなります。
吐く事に重きを置いた2:1の深い呼吸はこれら神経系の低下に伴う症状の最も手軽かつ重要な対策法でもあるわけです。
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