腸腰筋=何となく重要そうな筋肉。このイメージは広く共有されているのではないでしょうか。
実際、腸腰筋の機能不全(過緊張や筋力低下)は、反り腰やスウェイバック、太モモやふくらはぎの張り、足や足首の浮腫み、腰痛や坐骨神経痛などに繋がる可能性があり、腸腰筋の機能改善は、張りや痛みの改善、あるいは姿勢や動作の安定にも寄与します。重要な筋肉です。
そんな腸腰筋の鍛え方にはポイントがあります。例えば「低負荷」かつ「股関節深屈曲位」あるいは「股関節伸展位からの」運動が有効とされる、などです。
ですが、じつは腸腰筋は鍛えても使えるようにはなりません。
腸腰筋を使うには「準備」がより重要で、準備に注力する事で結果的に活かせるようになる筋肉が腸腰筋です。そこで本記事では、腸腰筋を鍛えて“使えるようにする”ために欠かせない準備について詳しく解説します。
どんな方向け?➡スウェイバック/ロードシス(反り腰)、太モモ/ふくらはぎの張り、足/足首の浮腫み、腰痛/坐骨神経痛に悩んでいる方
拮抗筋との関係について
腸腰筋の作用としては「股関節の屈曲(脚を前方に持ち上げる)」や「骨盤の前傾(とその保持)」「腰椎の伸展(とその保持)」などがありますが、日常の姿勢や動作場面におけるこれら腸腰筋の作用は、「カウンターとしての力(※拮抗筋)」があって成り立ちます。
※身体を動かす筋肉には「主動筋と拮抗筋」という関係性があります。主動筋は動作を主に行う筋肉で、例えば肘を曲げる際の上腕二頭筋がこれに該当します。一方、拮抗筋は主動筋の動きと反対方向に働き、動作を調整・制動する筋肉で、肘を曲げるときの上腕三頭筋がこれに当たります。両者はペアで協力し、片方が収縮する間にもう片方が伸びることで、体の動きを滑らかにバランス良くします。
腸腰筋の拮抗筋は「股関節伸展」「骨盤後傾」「腰椎屈曲」作用を持つ「ハムストリングス(モモ裏の筋肉)」や「腹横筋/内腹斜筋(お腹の筋肉)」です。
つまり、モモ裏やお腹に力が入って(体幹が安定して)いれば、姿勢保持や歩行中に腸腰筋の力を発揮できる/モモ裏やお腹に力を入れることができなければ(≒体幹が不安定であれば)、腸腰筋は十分に発揮できない、ということです。
「歩行」を例に挙げます。歩行中の腸腰筋は、脚が後ろに引けている間は伸ばされ、脚を前へ振り出すときは伸ばされた腸腰筋がまるでパチンとゴムが縮むかの如く収縮(求心性収縮)します。このメカニズムの土台(前提)に先述の「お腹やハムストリングスとの協調的な筋活動」があるわけです。
ですから、お腹の力が抜けてしまう状況下、例えば、ぽっこりお腹、リブフレア(肋骨の出っ張り)、肩で息を吸う癖(胸式呼吸の癖)などがあるときは、歩行中の腸腰筋の活動は低下します。すると、代わりに同じく股関節の屈曲を担う他の筋(たとえば大腿直筋や縫工筋、大腿筋膜張筋など)が過活動・過緊張を起こしやすくなります。端的に言えば、コレが張る理由や姿勢が崩れる理由、腰痛になる理由です。
腸腰筋は準備が9割。まずは拮抗筋を鍛える
まずお腹をモモ裏を鍛えましょう。そして呼吸を変えましょう。
例えば↓のようなエクササイズで「吸ったときに腰が拡がる」感覚を掴めれば、ある程度、持続的に下腹部の筋肉を収縮させることができています。
骨盤後傾位を保ちつつ行うヒップリフトで腸腰筋を伸ばしつつ下腹部やモモ裏を刺激することもおススメです。
これらによって「腰椎屈曲」「骨盤後傾」「股関節伸展」作用を持つ筋群を刺激したり、呼吸の改善もあわせて行いながら、体幹を安定させ
土台を作ってからその真逆の作用を持つ腸腰筋を刺激する、といった具合に、腸腰筋と拮抗筋をバランスよく鍛えます。