人類史の99.8%を占める狩猟採取時代と、私たちが生きる現代社会。その間に起きた急激な生活環境の変化は、脳の働きや自律神経に大きな影響を与えてきました。
自然の静けさから情報洪水へ:人類の脳に起きたこと
たとえば、狩猟採取時代には、動物の音や動きなど自然界からの特定の情報に集中する能力が求められました。食料を確保する行動そのものが適度に脳の報酬系を刺激し、達成感や満足感をもたらしていました。また、日常的に自然の中で過ごすことで、心の平穏を保つ効果も得られていたのです。
一方で現代はどうでしょうか?スマートフォンの通知音、次々と更新されるSNSのフィードといった終わりのない情報の洪水が、私たちの注意力を分散させています。さらに、加工食品や高糖質な飲料のように、人為的に作られた”快楽の罠”が脳の快感を得る仕組みを過剰に刺激しています。
その結果、本来の報酬系のバランスが崩れ、満足感が得にくくなるという悪循環に陥っています。そして、都市化によって自然との接点が減少したことも、ストレスを和らげる機会を奪い、不安やうつ病の増加に拍車をかけています。
人工太陽が与える自律神経への負荷
自律神経についても同様の問題が見られます。狩猟採取時代の私たちは、短期間だけ交感神経を活性化させ、危機に対応していました。しかし現代では、仕事の締め切り、通勤渋滞、人間関係の悩みいった慢性的なストレスが、交感神経を休む暇なく働かせています。
さらに、スマートフォンや照明といった“人工太陽”の影響を夜に受ける、あるいは夜勤や夜更かしをするなど現代の生活習慣が概日リズム(体内時計)を乱し、メラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの分泌を低下させるなど、副交感神経の働きは弱まりやすい状況でもあります。休息時に働くべき副交感神経が働かず、消化不良や睡眠障害、ホルモンバランスの乱れなどが生じ、全身の調子を崩す原因となっています。
身体全体への影響と対策
こうした影響は、心だけでなく身体にも波及します。高血圧、免疫力の低下、慢性的な疲労感…現代社会の過剰な刺激や複雑さに脳や神経系が対応しきれず、私たちは全体的な疲弊を感じています。
では、どうすればこの状況を改善できるのでしょうか?鍵となるのは「姿勢と呼級」です。せすじを伸ばし、肩の力を抜いて、10~20秒かけて深く長くゆっくり優しく口から息を吐き、鼻から吸います。吸うときに腰の拡がりを感じられれば「腹式呼吸」が出来ています。(感じられない場合、わざと猫背になり「お腹の持続的な収縮」を意識して練習してみましょう↓)
腹式呼吸を意図的に行うことで、副交感神経を活性化できます。これにより、ストレスが和らぎ、活性が高まりやすい交感神経を抑制でき、自律神経のバランスが整いやすくなります。
現代社会の中で健康を守るには、私たち自身が意識的に姿勢や呼吸や自律神経のバランスを取り戻す努力をする必要があります。
姿勢を正し、深い呼吸を心がける。その小さな一歩が、脳や体の負担を軽くする第一歩です。