慢性腰痛を抱える人にとって、痛みから一時的に逃れることは容易であっても、その本質に迫ることは困難を極めます。
ケアをしても整体やマッサージへ通っても、やはり痛くなってしまう。心なしか年々悪化している。そんな方とこれまで度々出会ってきました。
彼ら彼女らの痛みの頻度や程度がだんだんと減っていくことは、僕の喜びでもあります。
さて、本記事で僕からお伝えしたいことは
「あなたの腰痛が“ぶり返す”理由」です。
痛みの再発に悩まされている方や慢性腰痛を抱えている方に向けて、痛みの理解について掘り下げつつ、本質に迫るための具体的かつ実用的なアクションプランを提示します。では参りましょう。
即効性の魔力
痛みが襲ってきた時、私たちの心は「今すぐ楽になりたい!」と駆り立てられます。
そんな時に用いられる薬や湿布やマッサージやブロック注射ですが、これらは砂糖菓子のようなものです。短時間で効果を感じられる方法は魅力的かもしれませんが、不安やイライラを和らげる作用は一時的であり、真因を除くものでもありません。それで治りはしませんし、依存するほど悪循環に陥り得ます。
けれど、そんなことは誰しも知っています。知っているけど、頼るしかないのです。なぜでしょうか?痛みの真因がわからないからです。
痛みの真因とは
腰痛の原因は多岐にわたりますが、結局のところ本丸は血流、即ち血流不足です。痛みを変えようと思った時、とるべきは「血流を変えるための行動」です。具体的には姿勢の悪さ/不適切な動作学習/長時間の同一姿勢など「生活習慣を変えるための行動」です。生活習慣を変えて、血流を変えます。
あなたの腰痛がぶり返す理由は「血流不足に繋がる習慣があるから」です。姿勢なのか動きの癖なのか、それは分かりませんが、バケツの穴があります。その穴を塞がない限り終わりはないし、塞げば定期メンテナンスで済む。腰痛治療とはそういうものです。
ただ、穴の形も場所も大きさも塞ぎ方も、人により異なる。これが厄介です。何にどれくらい労力を割くべきか?は一人ひとり違うのです。ディテールになれば尚のこと。だから難しいし、みんな右往左往します。
向かうべき方向性
穴を見つけなきゃ始まらない。その場しのぎし続けるしかない。習慣を変えることはマストだけれど、共通の解は無い。これが腰痛治療の難しさです。ですが、当たりはつけられます。底付近に穴があるんだろうな、この辺から手をつけると良いんだろうな、と。
痛みを抱える人が向かうべき方向性、体得すべきスキル―それは、脱力です。まずは力を抜くことから始めれば良いのです。けどそれは、なぜでしょうか?
痛みを抱える人=戦闘モード
痛みを抱える人は、脱力が苦手です。常に戦闘モードで、ゆとりがありません。静かに立っていても、座っていても、寝ている時すらも、全身の過剰な力が抜けないのです。
腕や肩や腰や太モモやふくらはぎが、パンパンに張ったまま緩まない。これは普通ではありません。検査の数値にこそ現れませんが、先生もセラピストも指摘しませんが、明確な異常です。
脳や筋紡錘に刻み込まれた緊張は、年中無休で血管や神経を締め付け、血流や神経伝導を阻害し、痛みや痺れを引き起こします。筋活動や関節可動を制限し、筋萎縮や関節疾患や骨格の変化を引き起こします。
だからまずは脱力を目指すのです。
脱力の極意
脱力の極意は「呼吸」にあります。一つ目のアクションプランとして「細く長く優しく息を吐く呼吸」と「腹式呼吸」を身につけましょう。細かなノウハウは過去記事を参照下さい(下のGIFをタップすると遷移します)。コツは頑張らないことです。
呼吸は頑張ることではありませんし、頑張るから力みます。楽だな、ゆるんでいるな、という自分の感覚を頼りに、頑張らずに行いましょう。頑張らなければ、だんだん力は抜けていきます。
喉元過ぎても熱さを忘れないために
とはいえ「習慣の改善」は簡単ではありません。呼吸も習慣ですから、多くの人は中々変えられれないものです。痛みが和らぐと「もう大丈夫」とそれまで積み上げたことを忘れてしまったりして続けられない。これもぶり返す原因です。
習慣に終わりはありません。続けるからこそ習慣ですし、続けるからこそ良くも悪くも威力を発揮します。
ではどうすれば続けられるか?必要なのは動機です。続けられる人には強い動機があります。
強い動機がある人だけが、即効性の魔力に負けずに、長期的で本質的な改善、つまり「習慣を変える」ことに成功します。
スマホメモの活用
二つ目のアクションプランとして、なぜ「その場しのぎ」ではいけないのか?その痛みを取り除く必要があるのか?動機や目標をスマホのメモに書いて、定期的に見返しましょう。
復職する、とか
旅行へ行きたい、とか
趣味に躊躇なく打ち込みたい、とか
同行者に心配かけずに出掛けたい、とか
家事や子供の送迎をしなければならない、とか
コツはなるべく短期の目標を立てることです。将来のこと(例.寝たきりにならないように)があっても良いと思いますが、短期目標の方が「これができた」という成功体験を積めますし、その積み重ねによって「痛みに立ち向かえる」という実感も得やすくなります。
本質を見失わない
即効性のある対策を取り入れることは悪いことではありません。ただし、それに頼りすぎて「習慣を変えること」を見失ってはいけません。痛みの背後には「緊張を生む習慣」が潜んでいます。だからこそ、一時的な対策と並行して、根本的な原因にアプローチすることが大切です。