私たちの足には 内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ の3つのアーチが存在します。
アーチが機能するのは立つ/歩く/走る時です。
立位保持や歩行(走行)時、アーチは筋肉の作用バランスによって
「全身のバランスを保つ」
「衝撃吸収する」
「前方推進力を生み出す」
といった役割を果たします。
しかし、このフレキシブルかつダイナミックな「足のアーチ機構」は多くの利点をもたらしてくれるとともに脆弱性も孕んでいます。
「成人の4人に1人は偏平足」とも言われますが、アーチは骨構造や靭帯だけでなく筋肉で支える面も併せ持つからこそ、不安定で崩れやすいのです。
そもそも潜在的リスクを抱えた非常に繊細なつくりである「足」の問題は、多くの人にとって身近なものとなっています。
足の問題と言えば「扁平足」に代表される「アーチの崩れ」やそこから派生した開張足、外反母趾、足底腱膜炎やウオノメ、タコ、巻き爪、浮き指などをイメージしやすいかもしれませんが、それだけに留まりません。
後ほど「足のアーチが崩れることで起こる日常的な問題」の項で解説しますが、端的に言えば「足の問題」が腰痛や膝痛、股関節痛や坐骨神経痛を引き起こすもとになり得るのです。
(個人的な経験としても「アーチの機能改善による腰痛や坐骨神経痛の緩和」を感じる方を多くみてきました。「声」で述べられているような結果の過程の一つに「足の問題の解決」が含まれる場合は多々あります)
ですから特に立位や歩行時どこかしらに痛みが出る方は、今回のテーマである「アーチの機能不全」を疑うと良いかもしれません。
この記事では、足のアーチの基本構造や機能、問題が及ぼす影響、そして適切な対策について解説します。
足のアーチの重要性
足のアーチは以下のような機能をもっています。
1.体重分散:
アーチ構造が衝撃を吸収し、骨や関節への負担を軽減します。
2.歩行や運動の効率化:
歩行や走行時に地面から受ける体重の約1.2~5倍のエネルギーを吸収し効率的に推進力に変え、長時間の運動を可能にします。
3.バランス保持:
アーチを保持する筋肉は「姿勢制御の感覚器」としての機能も有しており、特に足底筋群が体重支持に関与する事で細かな重心の変化を捉え全身のバランスを保つ事ができます。
アーチを支える筋肉が弱くなると「扁平足」過剰に緊張すると「ハイアーチ」などの問題が発生し、全身の動きの柔軟性と安定性が損なわれる場合があります。
足のアーチが崩れることで起こる日常的な問題
扁平足とハイアーチはそれぞれ異なる日常生活上の問題を引き起こす可能性もありますが、共通して以下のような二次的な問題も起こりやすくなります。
•姿勢の崩れ(猫背/反り腰/スウェイバック)や歩行障害
•痛み(膝痛や股関節痛、腰痛や坐骨神経痛など)
•関節疾患(変形性関節症など)
以下、扁平足とハイアーチに付随して起こり得る日常生活上の問題を挙げます。
1. 扁平足(フラットフット)
扁平足(柔らかい足)は足底の縦アーチが低下した状態です。縦アーチが低下しているため、衝撃吸収能力が減少し、足や体全体にさまざまな影響を及ぼします。
2. ハイアーチ(高弓足)
ハイアーチ(硬い足)は縦アーチや横アーチが過度に高い状態です。足底の接地面積が減少するため、衝撃分散が不十分となります。
ハイアーチ(高弓足)における日常生活上の問題
1. 足の問題
・足底の痛み:特に足のかかとや前足部に痛みが集中する。
・足底筋膜炎:アーチが高いために足底筋膜に過剰な緊張がかかりやすい。
・疲労骨折:過剰な荷重が中足骨や踵骨に集中するため、骨折のリスクが増加。
・タコやウオノメ:足底の特定部位に過剰な圧力がかかる。
2. 膝や股関節への影響
・膝や腰の痛み:衝撃吸収能力の低下により、膝や腰に負担がかかる。
・姿勢の不安定さ:接地面が小さいため、歩行やバランスが取りづらい。
3. 歩行や姿勢の問題
・歩行時の衝撃の強さ:アーチの高さによって足全体が硬くなり、地面からの衝撃が増加。
・足指の問題:足趾が常に過伸展または屈曲しやすい(ハンマートゥやモートン病など)
4. その他の日常生活の困難
・スポーツが難しい:特にランニングやジャンプなど、高負荷の動作で痛みが生じやすい。
・履ける靴が限られる:足のアーチが高いために標準の靴がフィットしにくい。
・足首の捻挫リスク増加:足部の柔軟性が低く、捻挫が起きやすい。
アーチを支える筋肉
次項で挙げるようなエクササイズやストレッチを状態に合わせて行い機能改善を図ります。その際の対象筋は以下の筋肉になる事が多いです。(太字が特に重要)
内側縦アーチ
関与する筋肉:後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋、足底筋群
外側縦アーチ
関与する筋肉:長腓骨筋、短腓骨筋、小趾外転筋
横アーチ
関与する筋肉:母趾内転筋、足底骨間筋、短趾屈筋、小趾外転筋+長腓骨筋(横アーチの外側をサポート)と後脛骨筋(横アーチの内側をサポート)
対策と予防
《必須》エクササイズやストレッチ
①準備(扁平足/ハイアーチ別)
•扁平足:
目標(目的)➡アーチを上げられるようにする(感覚を掴む)
手段➡後脛骨筋や足底筋群を強化するトレーニング。(ショートフットなど)
•ハイアーチ:
目標(目的)➡アーチを潰せるようにする
手段➡アーチ保持する筋肉が過緊張しているため前/後脛骨筋や足底筋膜やふくらはぎを柔軟にするストレッチから始める(アキレス腱を伸ばす、足底をほぐすなど)
②エクササイズ(扁平足/ハイアーチともに)
1.真っ直ぐな底/背屈動作の再獲得➡こねるような足の使い方をしない※傾向として偏平足は背屈制限、ハイアーチは底屈制限を伴う場合が多く、歩行や降段時のエラーに繋がりやすい。
2.姿勢そのものも改善➡人それぞれ
《できれば》適切な靴やインソールの選択
•扁平足:アーチサポートのあるインソールを使用。
•ハイアーチ:クッション性が高く衝撃吸収力のある靴を選ぶ。
老化は足からとはよくいったもので「アーチの破綻」は全身的な身体機能の低下や痛みのキッカケになり得ます。
最終的には3点(母趾球-小趾球-踵)が満遍なく支持として機能することが大切で、多くの場合、内モモがたるむのは母趾球が使えていないからであるし、お尻がたるむのは小趾球が使えていないからです。
アーチの機能改善を図るこは「いまよりも快適な日常生活」「将来の快適な日常生活」に直結するでしょう。
足底腱膜炎など足部に生じる問題だけでなく、腰痛や坐骨神経痛症状に悩む方も、専門家に相談しつつ適切なケアを始めることを勧めます。
※本記事は基本的に当院の利用者様向けに作成しています。具体的なエクササイズは来院時に送付しているセルフケア動画をご参照ください。